塩野七生さんの映画評でありながら、取り上げられている映画の大半はハリウッドの大作。
それもゲイリー・クーパーやグレタ・ガルボといった「古き良き時代」のスターの話が
中心で、ちょっと意外や意外といった印象の本ですが、そこはやはり塩野氏。
描かれているのは、やはり塩野氏の人間観を反映させた「人びとのかたち」なのです。
一線の作家で、塩野氏ほど、「戦争」と「性」を【人類にとって避けがたい事象】として、
きちんと逃げずに捉えている人はいないのではないでしょうか。恥ずかしながら未だ
『ローマ人の物語』は手を付けられていませんが、こういった小品を読んでもそのことが
伝わってきます。
この本の中で私が最も気に入った一節は、氏の子息(当時19歳)のフェリーニ評。
「フェリーニは、イタリア人の真実を完璧に描いていながら、われわれイタリア人
(編注:子息はイタリア人と日本人(塩野氏)のハーフ)がイタリア人であることを
恥じないですむ作品を創れる人だった」
この母にしてこの子あり、ですね。
もう一度じっくり『8 1/2』を見たくなりました。
画像上:『人びとのかたち』表紙
画像下:『8 1/2』のマルチェッロ・マストロヤンニ
日本イタリア京都会館
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